下丸子 鮨波づき 甲子の春酒 体験記
冬の名残がゆるみはじめた、穏やかな昼下がり。東京都大田区・下丸子に降り立ち、今日は下丸子 鮨波づきのランチへ向かった。

初訪問ながら予約困難店と聞き、店の前に立つだけで少し背筋が伸びる。今回は初めてご一緒する方もいたので、軽く挨拶を交わし、静かに暖簾をくぐった。
思えば、五反田の食堂とだかも予約が取りにくい人気店で、あの日の味わいを思い出す。
静かなカウンターに流れる緊張感
店内は7席のカウンター。柔らかな雰囲気の大将が、淡々と握りの準備を進めている。その空気は静かで、どこか張りつめていて——正直、「場違いじゃないか」と少しだけ気後れした。
ブログ掲載のひと安心
この空気感の店だとブログに書くのは難しいかもしれない。そう思っていたところ、今回もまた、後輩の奥さんに甘えて、掲載の可否を聞いてもらうことになった。
大将は「ブログは全然大丈夫ですよ」と一言。ただし、行きたくても簡単には予約が取れない点はぜひ記載してほしいとのことだった。こうして記事を書くことができたことに、感謝しかない。
鮨とともに、日本酒へ流れる時間

お任せのコースが始まり、まずは生ビールで口を整える。だが、鮨が運ばれてくるたびに、日本酒が恋しくなる。気づけばビールを合間に挟みながら、日本酒へと移っていた。同じようなペースで杯を重ねる人たちを見て、どこか“同じ側の人間”が集まっているような安心感があった。
心に残った三貫
中トロ
最初の一貫。醤油はすでに塗られて提供されると知らず、小皿を用意してしまい少し気恥ずかしい。口に運べば、脂はすっとほどけ、やわらかな甘みだけが静かに残った。

カワハギ肝付
淡白な身に、ねっとりとした肝。重なり合ったコクがゆっくりと広がる。思わず目を閉じたくなる一貫。大人になって、この味が分かってきた気がする。

鯖の棒寿司
締めた鯖の旨みに、シソの香りがふわりと重なる。巻きの所作も見事で、迷いのない手つきで仕上げられていく。口に含めばすべてがきれいにまとまり、するりとほどける。静かに印象を残す一貫だった。

日本酒と、さりげない気遣い
合わせた日本酒もどれも素晴らしい。最初に頼んだ天寿を飲み進めていると、大将が空いた瓶をそっと差し出してくれた。写真用にという、さりげない気遣いが嬉しい。鮨の余韻に引き寄せられるように、日本酒も自然と進んでいった。

今日の一杯:甲子 春酒香んばし

この日の一番は「甲子 春酒香んばし(きのえね)」。フレッシュな微発泡の口当たりに、やわらかな甘みが広がる。透明な瓶に、桜の花びらを思わせる春らしいラベルが印象的で、どこか可愛らしさも感じる一本だった。
甲子 春酒香んばしの豆知識
千葉・飯沼本家が手がける春限定の純米大吟醸生酒。開栓とともに華やかな香りが立ち、微発泡のフレッシュな口当たりが特徴。時間とともに甘みと旨みがやわらかく広がり、味わいの変化も楽しめる。春の訪れを感じさせる一本。
また一年後に思いを馳せて
楽しい時間はあっという間に過ぎ、退店の時間。「次の予約は一年後」との声に、この店の特別さをあらためて実感する。今日の縁に感謝しながら、やわらかな日差しの中を帰路へ。またこの場所に来られる日を、静かに楽しみにしたい。
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訪れたお店:鮨 波づき(下丸子)
鮨波づきは、下丸子に店を構える江戸前鮨店。旬の魚介を用いたおまかせコースを中心に、仕込みや熟成、温度管理にこだわった一貫を提供する。シャリとの調和を重視し、日本酒との相性も意識された構成が特徴。落ち着いた空間と丁寧な仕事で評判を集め、予約が取りにくい人気店として知られている。

