【日本酒イベント】春を探して四十二杯 立春朝搾りの会

立春の朝、雪の中を歩く

立春の朝に搾られた酒を飲む。
それだけで、なんとなく一年がうまく回り出す気がするから不思議だ。
この日、飲み仲間と向かったのは立春朝搾りの会。
立春朝搾りとは、立春の朝に搾られた、春のはじまりを告げる一杯のこと。
だが外は大雪。電車は大幅に遅延し、春どころか真冬のど真ん中。
こんな日に、なぜわざわざ飲みに出かけるのだろう——そう思いながら家を出た。

北千住・ウル虎の挑戦

会場は、以前も紹介した北千住のウル虎。
ここでは、今年の立春朝搾り42種類すべてを一挙に楽しめるという、なんともありがたい企画が開催されている。
店に入ると、店長さんが慌ただしく準備をしている。
チラシや銘柄一覧を眺めているだけで、自然と気持ちが高まる。

42種類を揃えるのは関東だけでは難しく、さまざまなツテを頼って集めたとのこと。
この会を開いてくれたことに、ただただ感謝である。

南南東に向かって、いざ開幕

今年の恵方、南南東に向かって乾杯。
テーブルにずらりと並ぶ8、9本の瓶に圧倒される。

1ターン目

これが5回繰り返されるというのだから、なかなかの覚悟がいる。
一杯の量は少ない。
だが、それが42回続くと話は別である。

立春朝搾りのリスト

楽しみから巡礼へ

2ターン目あたりまでは実に楽しい。
自分の好みを語り、仲間の感想に頷き、香りや余韻を言葉にする。
思い返すと、この時間がいちばん豊かだった。

2と3ターン目

しかし3ターン目あたりから、身体が正直になる。
フルーティーな酒よりも、すっきりと切れる辛口や、酸味の効いた一本がありがたく感じ始める。
4ターン目になると、「あと何種類残っているのか」が気になり出す。
楽しむというより、もはや巡礼のような気分だ。

4と5ターン目

完走、そして余韻

2時間半は長いと思っていた。
だが気づけば5ターン目、残り30分。
他のテーブルよりペースが遅いと知り、急にギアを上げる。
正直、最後のほうの味はあまり覚えていない。

それでも、なんとか42種類を完走。
電車遅延で30分以上遅れた仲間も、何事もなかったかのようにコンプリートしていた。
改めて、とんでもない酒飲みたちと飲んでいるのだと実感する。

今日一番良かった日本酒

甲子

今回の立春朝搾りで一番心に残ったのは、甲子(きのえね)立春朝搾り。

序盤に飲めたことも幸いしたのか、香りの立ち方が印象的だった。
フルーティーで、ほのかなガス感。
まさに春の息吹を感じさせる一本。

また別の甲子も飲んでみたくなる、やわらかな余韻があった。

甲子(きのえね)立春朝搾りの豆知識

千葉県酒々井町の老舗蔵・飯沼本家が醸す「甲子 立春朝搾り」は、立春の早朝に搾った純米吟醸生原酒をその日のうちに出荷する縁起酒。搾りたてならではのフレッシュな香りと、ほのかなガス感が魅力で、春の訪れを祝う特別な一本である。

そして、夜はまだ続く

立春朝搾りは神社でお祓いを受けてから出荷されるものだと思っていた。
だが実際は、蔵でお祓いを行うケースが大半だという。
優しい店長さんからそんな話を聞けるのも、このイベントの楽しみのひとつ。

また近いうちに来よう——そう思いながら店を出るはずだった。
だが気づけば、今度はワインを飲む流れに。
病院で怒られたことが一瞬脳裏をよぎる。
それでも酒仲間からの誘いはうれしい。
そのまま、夜の街へと繰り出した。

春はまだ遠い。
けれど、杯の中だけは確かに春だった。

訪れたお店:ウル虎(北千住)

スタイリッシュな内装と、本格的な日本酒の品揃えが魅力の立ち飲み店。2時間3,300円で地酒26種類が飲み放題という、夢のようなシステム。風の森や若駒など通好みの銘柄がずらりと並び、日本酒好きにはたまらない、知る人ぞ知る名店。

  👉 呑酒場 ウル虎(食べログ)

前回北千住を散歩した際に訪問したウル虎の話もあわせてどうぞ。
こちらもまた違った魅力にあふれています。

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